「社会人大学人見知り学部卒業見込」若林正恭
ある芸能人のエッセイを読もうと本屋へ。手に取ると、薄さにびっくり。ケチな自分は買うのを悩んだ。どうせ買うならたくさん読みたい。
そう思い、他の本を物色していると
「社会人大学人見知り学部卒業見込」
というタイトルが目に付きました。
さっきのエッセイ本より、数倍分厚く、中身も読みやすそうだったので購入することに。
作者はお笑い芸人の若林正恭さん。オードリーのツッコミ担当。
・高級料理を食べることが幸せと思ってないのにテレビの前では嬉しそうに振る舞う自分へのジレンマ
・自意識過剰なせいでスタバで「グランデ」と言えない
など若林さんがお笑い芸人としてテレビに出始めてから感じる自分と社会や他人とのギャップについて語られています。
文章表現も独特で
・穴があったら入って地下都市を作って二度と出てこないぐらいに恥ずかしい
・鼻孔が小爆発したかのような感動を覚えた
といった表現が個人的には好きです。
また、社会と上手く馴染めなかった人間が葛藤しながらも社会との折り合いをつけて学んだことも書かれています。
その中で特に私が印象に残っている話は最後に書かれている「社会人大学卒業論文」。そこには小学6年生で中学受験をするため塾へ通う若林少年が書かれています。
受験をするのは人生を有利に過ごすため。
先生からそう言われたけれど、毎朝満員電車に乗っている大人たちを見ていて楽しそうに見えない。
そんな時期にテレビを見ていると、お笑い芸人が普通とは違うレールを進みながらも楽しそうに「社会」というものに参加している様子を見て、憧れを抱き、自分自身もその道へと進む。
そして、お笑いの道へと進むなかで、結果よりも過程を大切にするという基準が生まれ、著者は次のように語っています。
「「結果が全てだ」という考え方が世の中には蔓延している。……しかしぼくの胸には「結果」自体は強くは残らなかった。自分の胸を探ると、掴めるのはいつも過程だった。……特にすごい訳じゃなく、特にダメじゃない。そんな自分の自己ベストを更新し続けていれば「結果」があとからやってこようがこなかろうがいいじゃないか。特別な才能がないから自己ベストを更新し続けるしかないという諦めは、ぼくにとって自信になった。」
結果ではなく今日の自己ベストを超えることができたかで判断しているからこそ成長へと続く考え方。また結果だけに注目せず、過程でどれだけ頑張れたかを基準とすることで、改善点も見つけやすくなります。
今日、できる自分の精いっぱいで生きていけばいい、そんなふうに言われている気がして 気持ちが楽になりました。
本書は
・会社で働き始めた人
・社会と自分の気持ちに違和感を感じる人
などにおすすめです。