猫田のサブカルインフォメーション

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自分の人生に疑問を感じたときに読みたい「持たない幸福論」pha

持たない幸福論

 欲にとらわれている自分にとって、タイトルの「持たない」という部分が、妙に気になりました。

 作者は「 pha(ファ)」さん。京都大学出身。28歳で会社を辞めてからは、シェアハウスをし、ブログなどを書いて生活をされているそうです。

「働かなければならない」

「家族を作らないと一人前でない」

「お金がないと生きていけない」

 といった仕事、家族、お金にとらわれずに、自分らしく生きるためにどういう考え方が必要か作者なりの見解で書かれています。

「なんでこんなにみんなしんどそうなんだろう」

 本書はそんなタイトルで始まります。

 今の日本は物質的にも豊かなのに、生きるのがつらそうな人たちが多いのは変ではないかと問う作者。

 私も社会人になってからはより強く感じます。3食ご飯を食べることができるし、好きなテレビや漫画も見ることができる。世界から見たら十分恵まれている。そのはずだけど、なぜだか生きづらく感じてしまう。

 その理由を作者は

「多くの人が普通にこなせないものを『普通の理想像』としてしまっているから、みんなその理想と現実のギャップで苦しむのだ」

としています。

「正社員で働く」

「ある程度の年齢になったら結婚する」

 非正規雇用の増加や晩婚化など、昔と社会情勢は変わっているのに、求められることは昔と一緒の基準。

 今まで疑問に思っていたことがすーっと頭に入っていく感じがしました。確かに社会情勢が変わっているのに、昔と同じ価値観を今の時代に押し付けることは無理があります。風船に空気を入れすぎると破裂してしまうのと一緒で、なんでもかんでも状況を考えずに空気を入れることで爆発してしまうのかもしれません。

「どの生き方が偉いとか正しいというものはない。……要はその人が……充実感を持てたらそれでいい。……自分が自分の世界の中で充実感を得られるにはどうしたらいいだけを考えよう」

   と、作者は語っています。

 頭のいい高校や大学に入学する、一流企業に入社することはとても素晴らしいことだと思いますが、結局のところ、本人がそこの学校や企業に入って「どういう人生を送りたいか」ということを達成できていなければ生きる気力がなくなってしまうかしれません。

 こういうちょっとした社会問題の疑問について作者が分かりやすく解説しているので、自分の言葉にできていなかったモヤモヤの答えを整理することができますし、新しい価値観を取り入れるきっかけにもなります。

 巻末には「ゆるく生きるためのブックガイド」として、本書で紹介されている本のリストが列挙されているので、読書の幅を広げるにはいいと思います。

 作者のゆるく生きる考え方は合わない人もいるかもしれません。

 けれど、今の世の中で生きることに疲れた人にとっては、肩の力を抜くための良薬になるんじゃないかなと思います。